| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-032

林分構造がツル植物の分布に与える影響‐地形及びよじ登り様式による違い‐

*楠本聞太郎,井上貴文(九大院・生資),榎木 勉(九大・演習林)

暖温帯性広葉樹二次林において、異なるよじ登り様式を持つツル植物の分布と林分構造との関係を検証した。100m×100mのプロットを10m×10mに区分したセル毎に、ツル植物(根元から1.3 mの直径1 cm以上)と立木(胸高周囲長15 cm以上)の毎木調査を行った。また、各セルの林冠高を測定し、林分構造の指標とした。林冠高が10 m未満のセルを林冠ギャップ(ギャップセル)、それ以外のセルを閉鎖林冠(閉鎖セル)とした。更に、地形を評価するために、標高によってプロットを尾根、斜面、谷に区分した。各セルに出現したツル植物の、よじ登り様式毎の幹数を目的変数とし、立木の幹密度を説明変数として、空間的ランダム効果を考慮したCARモデルを構築した。定数項、係数、またはそれらの両方が、地形、林冠構造、またはそれらの両方によって変動すると仮定した9通りのモデル間で、DICを比較した。全体では14種、218本のツル植物が記録され、よじ登り様式では、巻付き型、付着型、巻ひげ型が見られた。巻付き型の幹密度は、地形によって差がみられなかった。付着型の幹密度は尾根で高く、谷に向けて減少した。尾根と谷では、巻付き型はギャップセルで幹密度が高く、付着型は閉鎖セルで幹密度が高かった。CARモデルで解析した結果、巻付き型、付着型とも幹密度と立木幹密度の関係は、地形によって異なっており、尾根で回帰線の傾きが小さく、谷で大きくなる傾向がみられた。付着型の幹密度と立木幹密度の関係は、地形だけでなく、林冠構造によっても異なった。これらの結果は、2つのよじ登り様式間のホスト探索及びホスト利用戦略の違いを反映していると考えられた。


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