| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-034
林床植生は様々な種で構成されており、生物多様性の面で生態学的に大変重要である。しかし、環境の影響を受けやすいためその種構成も変わりやすい。近年、雑木林に生育する多くの種が国や都道府県のレッドデータブックに記載されている。そこで本研究では、林内環境として光環境を取り上げる。管理の有無や上層木が光環境に与える影響を調べ、その中で林床植生がどのように成立しているかを明らかにし、今後の雑木林管理の一助とすることを目的とする。
研究対象地は神奈川県川崎市麻生区黒川の雑木林とした。調査区1として下草刈りと落葉掻きを行った管理区と放置区を設定した。調査区2として調査地の代表的な樹冠構成樹種であるアラカシ、コナラ、モウソウチク林内とコナラ林林縁部の計4区を設定した。調査区1、調査区2の各区にそれぞれ5つの1m×1mのコドラートを設置して調査を行った。調査項目は出現種、種別の最高自然草高、被度、生活型、種子散布様式、相対光量子束密度とした。
調査区1では管理区で19種、放置区で4種が確認された。調査区2では林縁区で最多の39種が確認された。調査区1ではフタリシズカやミヤマナルコユリ、調査区2ではキンランやタマノカンアオイなどの林床植生を代表する種が見られた。どちらの調査区でも生活型は様々なタイプが出現したが、種子散布様式には偏りが見られた。相対光量子束密度は調査区1で管理区が放置区より高い値を示し、調査区2では林縁区が最も高い値を示した。
今回の調査地では下草刈りと落葉掻きを行うことで光環境が改善され、ある程度林床植生が回復すると考えられる。よって多様性の高い林床植生の形成には下層植生の管理が有効であると示唆された。また、樹冠構成樹種の違いが林内の光環境に違いとして現れていたので、林床植生に影響を与えていることが考えられる。