| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-037

都市域孤立林における低木種の分布を決める要因は何か?

*伊藤千恵,藤原一繪(横浜国大・院・環境情報)

都市域の森林は,都市化に伴う開発により,孤立・分断化した林分が多くを占める.都市域孤立林は,林縁部の増加による光の増大・乾燥化,面積の減少による適地の喪失,種子源からの隔離といった影響があることが指摘されている.また,都市域孤立林においては,増加傾向にある種,減少傾向にある種に関してもわかってきているが,それらがどのように分布し,分布を規定する要因についての知見は少ない.そのため,ライフサイクルが比較的短く,影響が現れている可能性の高い常緑低木種に着目し,都市域の孤立林における分布を規定する要因を明らかにするとともに,どのような環境で新規加入および枯死が起きているかを明らかにすることを目的とする.

全14林分・47方形区で調査を行い,対象とした低木種にはタグをつけ,個体数および樹高を測定した.翌年に,個体の生死および新規加入個体の確認を行った.各方形区で,相対光量子密度,土壌水分,斜面傾度,林縁からの距離の測定を行い,調査林分の面積および周辺林分との近接性を計算し,それらを環境要因として一般化線形混合モデルによって解析を行った.

解析の結果,都市域で増加が指摘されているアオキやシュロは,周辺林分との近接性が低い林分(孤立している林分)で個体数が多いことがわかった.これは,植栽起源の種子が孤立した林分に集中したことが示唆される.

一方で,ヤブツバキ,ネズミモチはより暗い地点,ヤブニッケイはより面積の大きな林分に多かった.さらに,ネズミモチ,シロダモの新規加入には,土壌水分が制限要因となっていた.これらのことから,これらの種はさらなる分断化が進むと個体数が減少する可能性も考えられる.


日本生態学会