| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-040

越後平野に残存する3湖沼の湖岸における植物分布を規定する要因

*張替徹(新潟大・農4年),石田真也(新潟大院・自然科学),高野瀬洋一郎(新潟大・超域研究機構),紙谷智彦(新潟大院・自然科学)

越後平野では、干拓により多くの湖沼が失われ、氾濫原由来の植物種が急速に減少した。本研究では、越後平野に残存する3つの湖沼の湖岸における植物の分布特性とそれを規定する要因を明らかにし、湖岸植生の保全について議論する。

各湖岸に10mのベルトをランダムに設置し(福島潟41、鳥屋野潟39、佐潟22本)、連続する1mx1mの調査枠に分割、出現した維管束植物種を記録した。ベルト毎に環境要因(比高、冠水日数、リター重量、高茎草本密度、最大植生高、土壌EC、pH)を測定し、人為撹乱(耕作履歴、火入れ)の有無を記録した。

ベルトあたりの種数、外来種の出現頻度を応答変数、各要因を説明変数、湖沼をランダム要因としてGLMMで解析し、以下の結果を得た:(1)総種数には, 耕作履歴以外の全てが影響し、 特にリター重量と、EC、冠水日数が重要である、(2)湿生種数には、リター重量、植生高、冠水日数が負に、高茎草本密度、pHが正に影響し、(3)外来種の出現頻度には、高茎草本密度、EC、比高、火入れが正に、植生高、リター重量、pH、冠水日数が負に影響していたが、ECと冠水日数の影響は湖沼間で違いがあった。

次に、 植物分布と各要因との関係をCCAで序列化し、 以下の結果を得た:(1)佐潟、鳥屋野潟の植物分布には、比高、冠水頻度、リター重量が影響した。(2)福島潟では、高茎草本密度、EC、pHの影響が大きく、比高、冠水頻度がこれに続いた。

以上より、湖岸の植物分布及び種数には、(1)複数の環境要因が複合的に影響し、(2)各要因の相対的な重要性は湖沼間で異なることが示された。湖岸植生の保全のためには、各湖沼の特性(特に、人為攪乱の有無と水位変動パターン)を事前に把握した上で、必要な保全措置を行うことが必要である。


日本生態学会