| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-041
渓畔域は、河川の侵食・堆積作用や洪水・土石流などを受け、独特な環境条件と撹乱体制にさらされており、各樹種にとって様々な生育環境が提供される。こうして生じるあらゆる地形、あるいは立地微環境が各種の定着・更新に関係していることは明らかだが、どの要因が強く影響しているのかを比較した研究はあまりないようである。そこで、本研究は、渓畔林構成樹種が実際にはどのような環境条件の下でよく定着しているのかを調べ、どの要因が各種の有無を強く説明するのか、種間にどのような差があるのかを確かめることを目的とする。
青森県の蔦川・奥入瀬川周辺で、よく見られる数種の渓畔林構成種と、比較対照のためにブナを対象とした以下のような調査を行った。流路沿い・湖畔で小ポイントを等間隔に設定し、そこでの各種の成木の有無と、環境条件(地形分類、および比高、基質、傾斜、堆積土壌の深さ)を調べた。そしてGLM解析により、各種の有無がどの要因から強く説明されるのかを調べた。また、主成分分析により各種のニッチの比較を試みた。
GLMの結果から、テラス・山腹斜面・堆積面・湿地などといった地形分類をみても、あるいは水面からの比高、表層の基質などの立地微環境をみても、各種の存在確率に効いている環境条件には種によって少し差があることがわかった。主成分分析の結果からも、各種のすみ分けを部分的に確認することができたが、重なりが大きい種もあった。また、ニッチの幅に差が見られた。
GLMの結果、ブナは明らかに安定した場所に多いのに対して、渓畔林構成種では逆の傾向が見られ、やはりある程度撹乱に依存していそうであることがわかった。各種にとって限定的な要因は異なるようだが、ニッチの幅に大きな差があることから、その制限力の強さは異なる可能性が示唆される。