| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-044
調査の目的・方法> 韓国の寺院林の植生調査・研究がこれまで韓国ではあまり行わなかった。また韓国では寺院林の植生学的重要性に対する認識不足もあり森林の体系的保全・管理が十分でなかった。本研究では韓国の寺院林の植生学的構造を分析し、人為的破壊の影響の増大による森林劣化に抗する体系的な保全・管理の方策を検討した。韓国南部地域の寺院林12箇所の典型的な寺院林を選んで植物社会学的調査(Blaun-Blanquet, 1964)を実施し、寺院林の種組成及び階層構造を分析した。なお、寺院林構造分析にはのため応用生活形(Numata, M.,1969,1970)を使用した。
結果> 韓国の寺院林は自然状態が維持されたと人工的林分に大別できる。半自然的林分として、周辺森林の形態のようにアベマキ林、コナラ林および常緑広葉樹林が、人工的林分としてアカマツ林等があげられる。 韓国の寺院林はアベマキ林、コナラ林などの典型的な韓国の落葉広葉樹林およびアカマツ林、カヤ林などの針葉樹林、そしてスダジイやアカガシなどの常緑広葉樹林などで構成されている。落葉広葉樹林では多くの場合、スズタケが低木層および草本層に優占している。生物多様性の確保のためスズタケの刈取りなど下層植生に対する管理が必要と考えられる。針葉樹林ではアカマツ林を保護する必要があるが、林分に多量の落葉広葉樹の落葉が堆積しており、土壌環境が大きく変化していることが示さされた。そのためアカマツ以外の高木種の伐採および下層の スズタケ等の除去作業が必要である。常緑広葉樹林では、主としてアカガシ林とスダジイ林で構成されている。また一部ウラジロガシやシロダモの優占林分もみられる。 別の植生タイプと森林を構成している常緑広葉樹寺院林では人為的管理の影響が及んでいる。