| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-045

北関東の丘陵域におけるフモトミズナラ林の林分構造

*須田大樹(埼玉県立自然の博物館),星野義延(東京農工大・農)

フモトミズナラは北関東・東海の丘陵域に分布するブナ科コナラ属の落葉広葉樹である.外部形態は朝鮮半島や沿海州に分布するモンゴリナラと類似し,分類学上の位置づけについては諸説ある.生育地は丘陵の二次林でありコナラと混生するが,これまでフモトミズナラ林の構造は明らかにされていない.

調査は2004-2006年に実施し,フモトミズナラ優占21ヶ所,コナラ優占18ヶ所,コナラのみ(フモトミズナラ不在)24ヶ所で,植物社会学的植生調査,萌芽状況および大径木の胸高直径の記録などを行った.また,桐生市吾妻山塊において,フモトミズナラ優占林2ヶ所,コナラのみの林,両者の混生林の計4ヶ所で毎木調査(20m×20m)を実施した.

この結果,フモトミズナラ優占林では高木の約7割が萌芽幹を有し,コナラ林と同じように伐採・利用されてきた萌芽林であることが明らかとなった.3〜5層の階層構造からなり,群落高は10〜17m,林冠被度は75〜90%,林冠にはコナラ・カスミザクラ・アカマツ・クリ等を混生した.フモトミズナラの胸高直径(各調査地で最大の幹)は17〜36cm,萌芽幹数は1株3本前後であった.亜高木層(リョウブ・エゴノキ・アオハダ・マルバアオダモ等)は高さ6〜10m,低木層(ヤマツツジ・ムラサキシキブ等)は高さ1.5〜4mであった.

コナラ林と比較して,フモトミズナラ林は群落高が低く胸高直径が小さく,萌芽幹数が多い傾向があった.毎木調査結果からフモトミズナラはコナラより先駆的であることが示唆され,人為的攪乱あるいは特殊な立地(冬季季節風のあたる北西斜面上部,やや高標高,急傾斜)で優占林をつくると考えられた.林内に常緑樹の稚樹はほとんど生育しないため,フモトミズナラ林は土地的極相と考えられ,現在は人為的攪乱によって維持されているものと考えられた.


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