| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-047
渓畔林を構成するいくつかの樹種は大規模・低頻度な撹乱に依存して更新すると言われるが、実際に撹乱後間もない林分を研究した例は少ない。本研究では土石流後14年が経過した若齢渓畔林において優占樹種であったケヤマハンノキ、オノエヤナギ、カツラ、サワグルミを対象に分布と立地環境を調査した。
調査地は凝灰岩質からなり、1995年の集中豪雨により上流部の山腹が崩壊、土石流が発生し、川岸にテラス地形が形成されて一斉林が成立している。ここにベルト状の調査区を設け、毎木調査、樹幹解析、土壌粒径、水分含有率、光環境を調査した。
調査の結果、ケヤマハンノキとオノエヤナギ、サワグルミとカツラに共通の傾向が見られた。前者は明るい立地に圧倒的に優占し、まとまって分布していたが、稚樹は少なく、ケヤマハンノキでは多くの枯死木が確認された。また樹幹解析より土石流直後に多くの個体が一斉更新したと推測された。一方、後者は小径木が多く、やや暗い場所に分布していた。樹幹解析より土石流直後に定着したと思われる個体はほとんどなく、多くは土石流の3〜4年後から定着し始めたと思われた。また比較的、大径の礫が現われる傾向があり、粒径組成は個体間で大きくばらついた。
ケヤマハンノキ、オノエヤナギが明るく粒径の細かい立地に素早く侵入、定着したのに対し、サワグルミ、カツラはやや暗く礫径の大きい立地に遅れて定着している。この定着時期、分布様式の違いは、初期成長速度の違い、それにともなう競争、好適な光環境・基質の違いに起因すると考えられた。