| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-048
ナラ枯れによる一斉枯死で形成された林冠ギャップが里山二次林群落に与える影響を明らかにするために、ナラ枯れ被害後の林分で継続調査を行い、5年間の動態を定量的に解析した。
佐渡島で1998年に初めてナラ枯れが確認された二次林に2005年に50m×50mの長期モニタリング用の方形区を設定し、5年間の毎木調査、低木と実生のセンサスを行った。
ナラ枯れ以前に相対胸高断面積でのコナラの優占度は63.2%であったと推定された。ナラ枯れにより枯死したのはコナラの内の約22%であり、これにより群落内のコナラの優占度は51.6%に減少した。一方でイヌシデ、ソヨゴ、ヤマモミジは個体数と優占度の増加がみられた。枯死木の多い区画では少ない区画と比較してイヌシデの相対成長速度が大きかった。低木層において全体の幹本数は約40,000本/haであり、2005年から2009年にかけてヒメアオキを中心とする常緑低木の優占度が約61%から約67%に増加した。林床ではコナラ、イヌシデ、シロダモの実生が観察された。5年間でイヌシデの実生はより集中的な分布に変化した。階層間の分布相関は常緑低木とイヌシデ実生、コナラ実生がそれぞれ負の相関を示した。また、林冠層のイヌシデ、ソヨゴと下層の落葉高木の稚樹が負の相関を示した。
このことから、現段階では常緑低木の増加が実生の更新を阻害するとともに、中高木の成長と幹数の増加が稚樹の成長を阻害するため進行すると考えられた。この調査林分ではナラ枯れ被害により形成された林冠ギャップが枯死木林冠下で待機していたイヌシデによりある程度埋められる可能性が高いが、イヌシデの密度の低い場所では常緑低木が繁茂し、更新が留まる可能性も示唆された。