| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-051
滋賀県南部の田上山地は標高200〜600mで暖温帯低地に位置するが、そこにはヒメコマツがまとまって分布し、アカマツとともに優占林をつくっている。このようなヒメコマツ林は分布上重要だが、その更新様式はよくわかっていない。そこで、本研究では、このアカマツ‐ヒメコマツ林において、両種の実生・稚樹(以下、稚樹と呼ぶ)の分布状況を立地環境とあわせて調べ、ヒメコマツの更新特性を解明することを試みた。
アカマツ‐ヒメコマツ林に20m四方の調査区を5つ、すなわち大・小ギャップ区、閉鎖林冠区A(落葉樹が多い)・B(常緑樹が多い)、露岩尾根区と、10m四方の調査区(斜面崩壊区)1つを設置した。各調査区で毎木調査を行い、さらに調査区を2m四方の方形区に分け、方形区ごとに、出現したすべてのアカマツ・ヒメコマツ稚樹の高さや立地条件などを記録し、また開空度と下層植生の植被率を求めた。
各調査区におけるアカマツとヒメコマツの成木個体数はそれぞれ1〜13と4〜34本/0.04ha、胸高断面積合計は0.08〜1.03と0.14〜0.64m2/0.04haであった。アカマツ稚樹の個体数は0〜1028本/0.04ha、計1365本/0.24haであり、そのほとんどが斜面崩壊区と大ギャップ区で見られた。一方、ヒメコマツ稚樹の個体数は1〜514本/0.04ha、計859本/0.24haであり、大ギャップ区>露岩尾根区>閉鎖林冠区A>斜面崩壊区>小ギャップ区>閉鎖林冠区Bであった。方形区ごとでは、アカマツ稚樹は開空度の高いところでのみ、一方ヒメコマツ稚樹は開空度の低いところでも見られた。さらに、ヒメコマツはアカマツよりも木や岩の陰でよく見られた。
以上により、ヒメコマツはアカマツに比べ、耐陰性があるため多少暗い林内でも定着可能であること、また、地表攪乱の影響を受けやすいため安定した立地を好むことが示された。