| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-063

栽培体系がカラスムギの個体群動態に及ぼす影響:生命表反応テストによる解析

*浅井元朗(中央農研),高田壮則(北大・地球環境)

カラスムギは畑地,河川敷等に広く自生するイネ科の冬生一年草で,ムギ類では主要な雑草である.除草剤のみではムギ類栽培期間の密度制御が困難であるため,栽培体系の改変を含めた総合的な個体群管理が求められている.農耕地の栽培体系は雑草の個体群動態に密接な関連がある.したがって,出芽率,幼植物の生残率,種子生産量および種子の死滅率といった個体群増加率に大きく影響する要因とその寄与率を解明すれば,長期的な管理体系に指針を与える.本研究では1) 夏期の管理体系変更はカラスムギ個体群増加率に影響するか? 2) カラスムギの生活史において夏期不耕起環境による増加率抑制要因は何か? 3) 休眠・出芽特性等,生活史パラメータの異なる集団に対しても夏期不耕起管理は有効な密度抑制策となるか? を解析した.コムギ収穫後・コムギ播種前の耕起体系を組み合わせた数種の栽培体系を擬した圃場試験およびポット試験をおこなった.得られたカラスムギの生活史パラメータを用い,地上部植物体およびシードバンクの個体群構造の推移確率を栽培の各段階に分割した周期的推移行列モデルを構築した.推移行列モデルにより各体系における個体群増加率を算出したところ,圃場試験の結果,夏期の耕起管理,不耕起管理ではカラスムギの出芽動態が異なる影響を受けて,不耕起耕起管理体系では個体群増加率が低下した.また,弾力性分析および生命表反応解析により夏期の種子生残率,地表面種子の死滅率の寄与率が高い結果が示された.不耕起期間の地表面種子の死滅要因は昆虫による種子食害であり,試験ほ場ではそれがかなり高い割合であることが示唆された.さらに,シードバンクの持続性が高く出芽率の低い集団では,不耕起による出芽の促進は個体群増加を招くことが試算された.


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