| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-078
温暖化に対して人間側の適応の必要性が指摘されている(IPCC 2007)。森林生態系の適応を検討するためには、温暖化の影響を予測することが必要である。これまでの影響予測研究では、1km〜50kmの空間解像度で生育地が予測されている。そのため、実在する気候の不均一性や微地形を捉えられず、その予測結果を利用して具体的な適応策について考えにくい。
本研究では山岳域の自然植生が保護されている青森県八甲田山において、亜高山帯の優占針葉樹オオシラビソを対象に、50mメッシュという高解像度による温暖化予測を試みた。野外観察により得られた「湿原周辺がrefugiaになるのではないか」という仮説のもと、気候変数だけでなく、7つの地形変数と湿原からの距離を表す説明変数を取り入れモデルを構築した。湿原の衰退シナリオの違いも含め全8つの温暖化シナリオに対し、モデルを適用した。加えて、解像度の影響について検討するために、3次メッシュ(約 1km×1km)を使って調査地に対して温暖化予測を行った。
その結果、粗い解像度では、オオシラビソの適域を過大に予測してしまう傾向があることが分かった。また、高解像度でしか捉えられない適域があることも分かった。特に+2℃の温暖化においてそれは顕著であった。高解像度でしか捉えられない適域は、オオシラビソの主要な適域より温度条件が高い地域の湿原周辺であった。しかし、+4℃の温暖化ではすべての適域が消滅してしまった。
以上より、八甲田山における具体的な温暖化への適応策としては、温暖化後も適域として維持されやすい湿原周辺のオオシラビソを優先的に保全することが効果的であると考えた。