| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-083
空間的に不均質な資源の分布は植物の成長に影響することが知られている.しかし,野外で不均質に分布しうる光,水,栄養塩の分布とその組み合わせが植物の成長に与える影響に関する知見は限られているため体系的な評価を試みた.
資源とその分布の組み合わせにより,3資源とも均質に分布する処理1つ,2資源の分布が均質で1資源の分布が不均質な処理3つ,2資源が不均質な処理6つ,3資源が不均質な処理4つ,の14処理(10反復)を設定した.光は遮光ネット,水は土壌の性質,栄養塩は肥料の量を操作し異なる資源分布を設定した.それぞれの処理で,植物に与える光,水,栄養塩の総量は同一にした.その処理下で,クローナル植物のカキドオシを20cm×20cmのプラスティック製の容器で77日間栽培し,刈り取り,乾重量を測定した.
処理間でカキドオシの生物量に有意な差があった.水の分布が不均質な処理よりも均質な処理で生物量が高い傾向がみられた.ただし、光が水とともに不均質に分布するときよりも,栄養塩とともに不均質に分布するときに生物量が大きくなった.また,水,栄養塩が不均質なときに,資源が豊富な場所よりも少ない場所で根の生物量が大きくなる傾向が見られた.
利用可能な資源の総量が同一な環境であるため,処理間の生物量の違いは資源分布様式の違いに起因する.各資源が植物に与える影響は,資源の種類と分布,組み合わせにより変わりうることが示された.また,水の分布様式が生物量に影響を与えたのは,水が光や栄養塩の利用効率に大きく影響するためだと考えられる.さらに,資源が貧困な場所で、その資源の吸収器官の生物量を増やすことが、その場所の相対的な資源利用価値を高め、競争者が少ないことと相まって,植物の生残に有利に働く可能性がある.