| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-087

クローナル植物バイケイソウ個体群の遺伝的構造

*草嶋乃美,加藤優希,大原雅(北大・院・環境科学)

植物の繁殖には種子による種子繁殖、クローン成長などによる栄養繁殖の2つが存在する。繁殖自体は個体レベルで生じるが、それぞれの繁殖様式は個体群構造に影響を与えるとともに、その個体群構造も個体レベルの繁殖に大きな影響を与える。

本研究の対象種バイケイソウは種子繁殖と地下茎によるクローン成長を行うが、開花・結実に豊凶があり、その周期が個体群内・間で同調する。この植物は自家不和合性で、虫媒による種子繁殖を行い、またクローン成長については、開花ラメットの根茎が分岐し、1〜3個の娘ラメットを形成する(加藤,2009)。さらに、この2つの繁殖は一斉開花時に同時に行われる。

本研究では、開花年にのみ生じる種子繁殖とクローン成長がバイケイソウにおける個体群の構造にどのように影響しているのかを明らかにすることを目的とした。そこで野幌森林公園、恵庭、千歳、荻伏の4つのバイケイソウ個体群において3 m×6 mの調査区を設置した。そして、その中の全個体の位置と生育ステージを記録し、ステージクラス構造による個体群の時間的構造を調査するとともに、各個体から葉を採集して遺伝分析を行い、クローンの空間分布構造を調べた。

その結果、個体群間でステージクラス構造、遺伝的構造に違いが見られた。恵庭では種子繁殖由来の実生を含む幼個体およびクローン成長由来の大型の個体が共に多く、両繁殖様式が個体群の維持・形成に関与していると考えられる。一方、野幌・千歳・荻伏では種子繁殖由来の個体が少なく、クローン成長由来の個体は多いことから、主としてクローン成長による個体更新が行われていることが明らかになった。このことから、バイケイソウにおける種子繁殖・クローン成長の依存度は個体群によって差異があり、その違いがステージクラス構造および遺伝的構造に影響を及ぼしていると考えられる。


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