| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-088
野外で栄養塩パッチの存続期間は数日〜数十日であり、その空間分布は変化する。また、生育段階により、植物の栄養塩要求は変化するので、栄養塩パッチの影響も異なると推測される。そこで本実験では、「栄養塩パッチの出現が、植物個体の成長と根の反応におよぼす影響の大きさは、植物の生育段階で異なる」という仮説を、ソライロアサガオ(Ipomoea tricolor)を用いた栽培実験により検討した。
鉢内に円柱状の筒を埋設し、固形肥料を混ぜた土壌を入れ、筒内は富栄養、筒外は貧栄養とした。筒内に根は侵入できないが、筒を取り除くと、根はその部分の栄養塩を利用でき、これをパッチの出現とみなした。1個体のアサガオの実生を鉢に定植し、その後0日目、20日目、40日目にパッチを出現させた。パッチの出現時期に関わらず、全ての条件で3回(20日目,40日目,60日目)の刈り取りを行った。以上より20日間ごとの植物のサイズとパッチ内の地下部の重量分配を条件間で比較した。植物が利用しうる栄養塩は遅効性の固形肥料から徐々に溶出する事を考慮し、供給される栄養塩の絶対量が一定となる処理と、60日間の栄養塩の総溶出量が一定となる処理を設定した。
植物の成長速度とサイズに対するパッチ出現時期の影響は有意ではなかった。しかし、物質分配様式はパッチ出現時期により変化した。パッチが遅く出現する条件ほど、地下部への重量分配が大きい傾向がみられ、パッチ内の地下部の重量分配も大きかった。また、パッチ出現時期が同じでも、パッチの栄養塩量が少ない条件では、パッチ内の地下部重量が大きい傾向がみられた。パッチの出現が遅いと、貧栄養条件に晒された植物は、パッチ内へ根を配置し、その結果、栄養塩獲得量が増加したと推測される。