| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-091
根への攪乱は、植物の成長に影響を及ぼす。その影響は、攪乱の頻度・強度や栄養塩量によって変化し、さらに攪乱に対する抵抗性の違いにより、種間で効果が異なる可能性がある。そこで、根への攪乱頻度・攪乱強度・栄養塩濃度の組合せが、植物成長におよぼす影響の種間差異について、根の切除を攪乱とする栽培実験により検討した。
実験には、ウキクサ、アカウキクサ、コウキクサの3種を用いた。攪乱頻度(高・中・低頻度で根を切除)、攪乱強度(根長の100・50%あるいは根長1cm以下まで根を切除)、栄養塩濃度(富・中・貧栄養)の3要因を設定し、直径5cm、容量100mlのプラスティック容器を用いて、人工気象室で12日間栽培した。反復数は24である。栽培容器ごとに、1日おきの葉状体面積と、栽培終了時の乾燥重量を測定し、これらに対する要因の影響を分散分析により解析した。
ウキクサは高頻度の攪乱で収量の減少が有意だったが、攪乱強度間では有意な変化が認められなかった。また予備実験で高い成長を示した中栄養塩濃度で攪乱の効果は大きかった。一方、アカウキクサとコウキクサでは強い攪乱で収量が有意に減少したが、攪乱頻度間では有意に変化しなかった。収量の減少は、アカウキクサでは栄養塩濃度に関係なく見られたが、コウキクサでは富栄養塩濃度で大きく、中・貧栄養塩濃度で小さかった。これらは、乾燥重量と葉状体面積でも同様であった。
攪乱頻度や攪乱強度の効果には種間差異が存在し、大きな効果をもつ要因は種間で異なった。さらに、これら効果は、栄養塩濃度によっても変化しえた。これは、根の切除により栄養塩・水の吸収効率を変化させたり、根を再生させるために物質分配様式に変化が生じたためである可能性が考えられる。