| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-092

根が関与する自己・非自己認識が個体成長を介して競争に与える影響

*水谷紘菜, 可知直毅, 鈴木準一郎 (首都大・理工)

一部の植物は、近隣の個体が自らと遺伝的に同一か否かを識別(自己・非自己認識)するといわれる。この認識は、個体成長を介して近隣個体間の競争に影響を及ぼしうる。そこで、自己・非自己認識の制御機構と競争への影響を検討するため、ナスを用いて栽培実験を行った。

始めに、自己・非自己認識能力の有無を、挿木により作製した2個体のクローン間の競争と非クローンの2個体間の競争を比較して検討した。クローン間と非クローン間では2個体の収量には差はなかった。また、クローンの2個体間では個体重の差が小さかった。以上から、ナスは自己と非自己を認識していると考えられる。

次に、この認識機構に地上部が関与する可能性を検討した。隣接する2個体間の地上部を接木により交換し、隣の個体の地上部が自らの根と遺伝的に同一な処理を設け、交換しなかった場合と比較した。両者とも2個体の収量には差はなかったが、交換した処理では2個体の重量差が小さくなった。この結果は、自己・非自己認識の機構に地上部が関与する可能性を示唆する。

さらに、2個体間の競争と接触を仕切り板で防ぎ、上と同様の実験を行った。仕切りは、地上部のみ、地下部のみ、全体、なしの4種とした。地上部のみの仕切りで最も収量が大きく、地上部競争が成長へ大きく影響していた。また、地上部の交換による2個体の重量差の減少は、仕切りなしと地上部のみの仕切りでみられ、自己・非自己認識に根の接触が関与すると考えられる。

以上より、自己・非自己認識は根と地上部からなる個体全体で統合的に制御されることが示唆された。また、2個体が遺伝的に同一であると個体間での重量差が減少したことから、自己だと認識されると競争が緩和されると考えられる。


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