| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-096
自然状態に生育するマングローブ稚樹の生存戦略を, 葉の性質に対する環境要因の影響という側面から明らかにした.調査は西表島仲間川河口にて行った.Bruguiera gymnorrhizaとRhizophora stylosaの稚樹の個体の生育する土壌環境(地盤高,相対光量子密度,電気伝導度,酸化還元電位,アンモニウムイオン,硝酸イオン)の計測と,それぞれの個体の葉の性質(葉緑素値,葉の面積あたりの窒素量,葉の窒素再吸収率)の計測を行った.
結果, B. gymnorrhizaの稚樹は, 葉緑素値,葉の面積あたりの窒素量,落葉の際の窒素再吸収率と環境要因への相関が低かったことから,厳しい環境に対して, 安定した葉の性質をもつことで環境に適応している可能性があると示唆された.一方,R. stylosaの稚樹は,葉の面積あたりの窒素量,落葉の際の窒素再吸収率が,電気伝導度, 地盤高と正の相関があった.このことは, R. stylosaは生育条件の良い立地で, 生産効率を上昇させる戦略を持つ可能性があると示唆された.
B. gymnorrhizaとR. stylosaの稚樹の葉の性質が異なる環境要因に左右されることによって, 同所に出現した種の中で成長へ影響が現れ, 最終的にその場所での適者が決まると考えられる.