| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-101

共通資源競争下の一年生,多年生植物の共存からみるトレードオフの役割

岩田 繁英(静岡大学)

繁殖戦略のトレードオフの問題と繁殖と死亡のバランスは個々に考えられた.しかし,繁殖戦略の中に含まれるトレードオフは個体群動態にも影響を与えるためどのように死亡するかは種の共存にとっても重要である.そこで,繁殖戦略に何らかのトレードオフが存在する場合,繁殖と死亡のバランスとトレードオフが個体群動態に与える影響と役割について考察する.本発表では植物に注目し,植物の繁殖率と植物内の栄養塩量を含めた実質的な環境収容力,そして繁殖の中には種子の個数,種子に含まれる栄養塩量にトレードオフ関係を組み込んだモデルを構築し解析した.具体的に一年生植物と多年生植物の共存という観点からロッタリーモデル(Chesson and Warner, 1981)を基礎とした数理モデルを構築する.はじめにロッタリーモデルに対して栄養塩を考慮し,繁殖項の中に(摂取した栄養塩量(N u )を利用して生産される種子数,S)−(種子ひとつ当たりの栄養塩量,N)のトレードオフ(N u =S N),多年生植物はある一定量以上の栄養塩量を摂取できない()と種子生産を開始しないという仮定で組み込みその役割と影響について考察した. 結果は多年生植物の繁殖に関するトレードオフ,種子生産開始閾値と死亡率のバランスにより個体群動態がカオティックに振動する可能性が示唆された.特に,多年生植物の死亡率が低い,種子数が少ない状況ではカオティックになりやすく逆であれば安定共存しやすい.この結果はr-K選択のr選択におけるrにトレードオフを含んでいる場合に相当するため将来的に統一的な理論の構築を目指すきっかけになると考えている.


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