| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-216
タイ南部ナラチワ県のブードー・スンガイパディ国立公園とハラ・バラ野生生物保護区のフタバガキ林において,42ヶ月間にわたり大型の果実食鳥類であるサイチョウ類7種(オオサイチョウ,ツノサイチョウ,オナガサイチョウ,シロクロサイチョウ,ズグロサイチョウ,ムジサイチョウ,シワコブサイチョウ)が餌として利用する果実を調査した。調査期間内に採集した果実75科458種について,果実・種子の湿重,直径,短径,色,生活型,果実型など,サイチョウ類の果実選択に影響する特性を記録した。
採集した果実のうち,サイチョウ類は少なくとも33科93種の果実を利用した。サイチョウ類が利用する果実を多く含む分類群は,クワ科(15種),クスノキ科(12種),ニクズク科(11種),バンレイシ科(8種),センダン科(8種)だった。サイチョウ類はフタバガキ科やブナ科の果実,林床低木の果実は利用せず,ある特定の果実形質(高木,裂開果または皮の薄い非裂開果,赤または黒色の果実,極端に小さいか大きい果実以外)をもつ果実を好んで利用していた。
多様な果実と果実食動物が同所的に生息する熱帯林では,潜在的に可能な果実と果実食動物の組み合わせは多岐にわたる。しかし,実際に観察された果実と果実食動物の組み合わせは,ごく一部に限られる。本研究から明らかになったタイ南部のフタバガキ林においてサイチョウ類が利用する果実の特性は,他地域の先行研究の結果とほぼ同じだった。東南アジアに生息するサイチョウ類は生息環境によらず非常に似通った果実を餌として利用している可能性が高い。