| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-220

デイゴの蜜分泌と送粉者の訪花時間−特にオリイオオコウモリの利用について−

*中本敦,伊澤雅子(琉球大・理)

外来植物の侵入や植栽は、花粉媒介や種子散布における従来の動植物のパートナーシップを攪乱するだけでなく、外来種同士が新たなパートナーを獲得することで更なる外来種の侵入・定着を促進させることもある。デイゴErythrina variegataは沖縄県の県花として古くから植栽されているが、外来種である。その形態的特徴から鳥媒花とされるが、沖縄ではクビワオオコウモリPteropus dasymallusが盛んに採蜜する様子が観察される。本研究では、まずデイゴの蜜分泌様式と送粉者相、訪花時間の関係を明らかにすることを目的とした。

デイゴの蜜分泌様式の調査は、2005年に37花について、3時間置きに花蜜を採集することで行った。また、2009年にのべ259花について、3時間置きに蜜残量を調べた。訪花者については、2006年に3時間置きにデイゴ並木に沿って約1kmのルートを歩き、訪花種、個体数、行動を記録した。

訪花が観察された動物は6種(クビワオオコウモリ、セイヨウミツバチ、メジロ、ルリタテハ、シロガシラ、ハエsp.)であった。開花は早朝に見られ、花の寿命は約1日であった。蜜の分泌は早朝に始まり、午前9時をピークとした一山型となった。これに対応したかたちでミツバチは朝に最も多く、夕方になるにつれて減少した。また、メジロは朝と昼に花蜜を摂食した。オオコウモリの個体数は夜間の活動開始直後に最も多く、その後時間とともに減少した。

以上の結果から、デイゴでは在来と外来の様々な分類群の動物が花粉媒介者となっている可能性が高く、蜜の分泌時間と訪花者の活動時間帯ごとにそれぞれ適した訪花時間帯を持っていることが明らかになった。特に、夜行性であるオオコウモリは、鳥類と昆虫類の食べ残しの花蜜を狙って、夜間の活動開始直後にデイゴの花蜜を他の餌資源より優先的に採餌していると考えられた。


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