| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-222
同所的かつ同時期に開花する植物の間には送粉者をめぐる種間相互作用が生じる。複数の種が同時期に開花すると、送粉者を多く引き寄せることで送粉効率が上昇する(共同効果)というプラスの相互作用が生じる可能性がある。一方、送粉者をめぐる競争・他種の花粉が柱頭に付くことによる受粉受精の阻害(繁殖干渉)・適応度の低い雑種の形成といったマイナスの相互作用も生じる可能性がある。このマイナスの相互作用が強ければ、他種の排除(競争排除)や開花期のずれ(形質置換)が生じるだろう。このような開花時期を同じくする種での送粉者をめぐる相互作用を扱った研究はまだ少ない。本研究では送粉者を共有する近縁種間での繁殖干渉の有無について検証した。材料としてはツリフネソウImpatiens textoriiとキツリフネImpatiens noli-tangereという、同所的かつ同時期に開花し、送粉者(マルハナバチ類)も共有する種を用いた。
2種をそれぞれ野外から採集し鉢植えにした後温室で育て、開花後に2種の花粉を様々な割合で混ぜた混合花粉で人工受粉し、結果率を調査した。その結果、ツリフネソウの場合、受粉する花粉に10%でもキツリフネの花粉が混ざるとツリフネソウの結果率が大幅に低下することがわかった。このことから、ツリフネソウはキツリフネによる繁殖干渉を受けている可能性が示された。発表では、野外において繁殖干渉が未然に防がれている場合にはたらく機構について考察する。