| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-223
ホタルブクロは大きな釣鐘型の花が特徴的な雄性先熟の植物種で、開花期間は雄性期と雌性期に分けられる。送粉を担っているのは主にマルハナバチ類であるが、その雄性期、雌性期の花への訪花パターンや、それと関連した花の側の蜜分泌パターンについてはこれまで知見がなかった。本研究では、ホタルブクロの変種であるヤマホタルブクロを材料としてこれらのデータを収集し、それを送粉効率を上げるための植物側の戦略という観点から考察する。
まずホタルブクロの蜜分泌パターンを探るために、訪花者に吸蜜されないよう網掛けした条件下で、花蜜中の糖分泌量を経時的に測定した。その結果、糖分泌のピークは開花三日後であることがわかった。これは雄性期から雌性期への移行が終わった時期と重なっていた。
次に、ホタルブクロの群落でトラマルハナバチとミヤママルハナバチによる訪花パターンを観察した。雄性期の花と雌性期の花への訪花回数はほぼ同数(それぞれ68、62回)であった。ホタルブクロにとって送粉してもらうためには、ポリネーターに雄性期と雌性期の花両方に訪花してもらう必要がある。今回の結果から、ホタルブクロは雄性期から雌性期へと移行する中間に糖分泌のピークをもってくることで、ポリネーターによる訪花が雄性期、雌性期のどちらかに偏ることを防いでいる可能性が示唆された。一方、訪花の順番をみると、同株異花への移動が極端に少ないことがわかった。このことからホタルブクロは隣家受粉されることを避けるようなメカニズムをもっている可能性がある。この点については来年度に調査を計画している。