| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-226
生物多様性においては生物の種数に目が向けられているが、これだけでなく生物同士のつながりの複雑さも重要である。多くの生物種は例えば花粉や種子の運搬を行ってくれる動物の存在が無ければ存続できない植物種も少なくない。植物に訪花した昆虫は、確実に自分と同種他花に訪花してもらわなければ効率が悪い。そのため、植物は特定の送粉昆虫に適応し共進化する傾向がある。一方で、昆虫に対する特異的な送粉関係は、その昆虫がいなくなれば結実できないという危うさも持ち合わせている。そこで本研究では、昆虫体表付着花粉から送粉生態系における訪花者ネットワークを明らかにした。
秋田市近郊の小泉潟公園において約2kmのルートセンサスを9月中旬から10月中旬まで行い、花が咲いていた植物種を同定し、その訪花昆虫を捕獲した。体表付着花粉を分離するために、捕獲した昆虫を入れたチューブに0.4mol/Lのショ糖溶液を加えた。その後、転倒混和、ボルテクスミキサー、超音波洗浄機を用いて溶液を攪拌した。花粉の含まれているショ糖溶液を6μlスライドガラスに取り顕微鏡観察を行い、花粉の種数の計測を行った。計測の回数は3回続けて新しい種の花粉が観察されなくなるまで行った。花粉の種類の計測は踏査時に作成した花粉のタイプ標本を参考にして行った。分離前後の昆虫の体表付着花粉を実体顕微鏡で計数し、花粉分離の有効性についても検討した。花粉の分離成功率は平均96%であり、十分な分離能があると考えられた。調査時に開花していた植物は65種であり、そのうち、訪花昆虫がみつかった植物種は22種であった。一方、昆虫に付着していた花粉は全部で12種であった。付着花粉種数の多い昆虫群や特異的な訪花を受けやすい植物のタイプについて報告する。