| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-230
動物にとって、餌が種類によって分布が変動する環境で、限られた時間やエネルギーのもと、どのような餌を利用するかという決定は困難である。例えば社会性昆虫は、子育てのため、野外で集めた餌をそのつど巣に持ち帰らなければならない。そのような状況で効率よく餌を集めるには、巣の周辺に豊富に存在する餌を選ぶのがよいと考えられる。よってコロニーが利用する餌のメニューは、巣周辺の餌種の分布を強く反映したものになると考えられる。
しかし、コロニーの餌メニューに影響を与えるのは周辺の餌分布だけではないかもしれない。餌を集める個体の性質の違いによって効率よく集められる餌種が異なる可能性があるからである。実際に、社会性昆虫であるマルハナバチの仲間では、体サイズの違いや採餌経験の有無によって利用する餌種が異なることが知られている。では、コロニーが利用する餌メニューは、個体のどのような餌選択によって決まって行くのだろうか。
これを明らかにするため、同時に採餌させたトラマルハナバチの2つのコロニーについて、2008年7月の一週間、各個体が持ち帰る花粉団子を網羅的に解析し、個体が利用した花粉種と個体の性質(出身コロニー、体サイズ、採餌経験、採餌にかかる時間、採餌に出た時刻や日付)との関連を調べた。
その結果、個体によって利用する花粉種が異なっていたものの、その違いは個体の性質の違いによっては説明できなかった。しかし、集められた花粉の組成種はコロニーによって異なっており、その違いはほんの一部の個体によってもたらされていることがわかった。ミツバチと違って餌場を教え合わないマルハナバチのコロニーでは、少数の個体による餌選択の違いがコロニーの適応度に違いをもたらしうるかもしれない。