| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-231
スイカズラ属(Lonicera)は、北半球の温帯域で多様に分化した植物で、世界に約180種、日本にも21種が分布する(Hara 1983)。この属の諸種は、花の相称性、花筒の長さ、咲かせる向きなど、形態が多様であることが知られている。そのため、マルハナバチ群をはじめとした、様々な昆虫との送粉関係が考えられてきた。しかし、種ごとの詳細な送紛様式や、花形態とポリネーターとの適応関係についての報告は少ない。現在葉緑体と核の分子情報を用いて日本産スイカズラ属植物の系統樹構築を試みている。それによると、以前は複数回進化したと思われていた左右相称的な二唇形花が単系統になることを示唆する結果が出ている。花形の進化に送粉昆虫はどのように関わってきたのだろうか。
そこでスイカズラ属植物諸種の花形のちがいと訪花する昆虫相に関係があるのかを解明するため野外で調査を進めた。今回はその途中経過を報告する。
調査地は、長野県美ヶ原山麓、同県の乗鞍岳山麓、山梨県三つ峠山頂上の3か所である。そこに分布する、スイカズラ属植物7種、ハヤザキヒョウタンボク(L.praeflorens)、アラゲヒョウタンボク(L.strophiophora)、ウグイスカグラ(L.gracilipes)、コウグイスカグラ(L.ramosissima)、イボタヒョウタンボク(L.demissa)、キンギンボク(L.morrowii)、オオヒョウタンボク(L.tchonoskii)について調査した。
これらの種は花筒の向きや長さ、花冠の相称性や雄蕊・雌蕊の相互の位置関係等において相互に異なる。この調査では、1)花形態の特徴を定性・定量的に把握するとともに、2)訪花昆虫の種数と訪花頻度、3)花に訪花した昆虫の訪花行動と、その形態の把握につとめた。これらの結果に基づいてスイカズラ属植物の花形態と送紛昆虫との関係について考察してみたい。