| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-232
多くの小型食肉目は、果実を重要な食資源としており、種子散布者として重要な役割を担っている。小形食肉目の多くの種類は、糞を特定の環境に排泄するため、他の果実食者とは異なるseed shadow(=散布された種子の空間分布)を形成すると予想される。しかし、食肉目散布の有効性を定量的に評価した研究は非常に限られている。本研究では東南アジアに生息する果実食性食肉目、パームシベット(Paradoxurus hermaphroditus)を対象に、1.散布先環境の特性、2、その環境での種子の生存、成長の定量的評価を行い、さらに同所的に生息するブタオザル(Macaca nemestrina)とこれらの点を比較して、シベット散布の有効性を評価した。調査は、マレーシア・サバ州・タビン野生動物保護区で行った。まず、1.散布先環境の特性を明らかにするため、パームシベット、ブタオザルが散布した種子を探索し、これら散布先及びランダムに選択したコントロールサイトで、開空度、リターの深さ、他植性からの距離を測定した。この結果、ブタオザルはほぼランダム散布するのに対し、シベットは開空度の大きい他植性から離れた場所に特異的に散布することが明らかにされた。次に2、この環境特性の種子の生存、成長への影響を評価するため、パームシベットが好むパイオニア性の低木、Leea aculeataをモデル植物として、シベット、ブタオザルの散布先、コントロールサイトにその種子10個を設置し、1年間種子の生存、生長を追跡した。この結果、シベットの散布先では、種子の初期生存は低下するものの、1年後には、実生の生存、生長がともに有意に上昇することが見出された。すなわち、シベットは好適な環境に指向性散布を行う有効な散布者だった。他種の食肉目も、同様の指向性散布が見られる可能性がある。