| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-269
農村の景観構成要素のひとつである竹林の拡大が西日本を中心に各地で報告されている.各地における竹林の拡大とその要因等については,様々な着眼点から研究がなされてきているが,いずれも局所的な一定の環境条件のもとでの事例検討に終始している.そこで,本研究では自然・社会条件に着目して,地域レベルおよび広域レベルで竹林の分布と拡大について把握し,竹林の拡大が農村景観に及ぼす影響などについて検討した.
地域レベルでは,広島県内で社会・自然条件の異なる4地区(島嶼部の農村,都市,都市近郊,山間農村)において,植生図と空中写真から概ね20年間(1980年代〜2000年代)の竹林分布の変化を把握し,竹林分布の変化プロセスと要因について考察した.島嶼部の農村では放棄された蜜柑畑に竹林が侵入し,竹林総面積の年間拡大率は4.6%と4地区のなかで最も高かった.山間農村では,水田面積比率の高い地区ほど,竹林の分布密度は高く,農業と竹林との結びつきが示唆された.1960年代の燃料革命による里山林の管理放棄以降,ミカン畑や耕作地の放棄(1970年代〜),都市化・マツ枯れ等(1980年代〜)と続く土地利用の変化が地区ごとに時間差を持って進行しており,このことが各地区の竹林分布および拡大パターンを生み出す要因となっていた.
全国レベルでは,既存の竹林分布データ(自然環境GIS)と基盤環境データを用いて,一般化線型モデルにより,3次メッシュレベルで,日本全域における竹林分布確率を推定し,環境要因との関連性を検討するとともに,地域レベルで把握した詳細な竹林分布をもとに精度検証を行った.その結果,森林,農地,宅地がモザイク状に分布する里山的な環境において竹林の分布確率が高いことなどが明らかになった.また,地区単位での竹林分布確率の平均値と竹林の分布密度との間には高い正の相関が認められた.