| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-274
自然河川には,流路に沿って発達する瀬淵構造や砂礫堆,氾濫原などの変化に富んだ地形が見られる.また,季節に応じて変化する降雨や融雪流出の影響により,河川水の質や量にも季節性がある.このように空間的に不均一で,時間的にも動的な河川環境には,様々な動植物の生息場がモザイク状に発達し,生物多様性保全の観点からも重要な生態系が形成されている.特に,複雑に蛇行して流れる河川がつくりだす,瀬や淵などの地形要素は,河川に生息する魚類や底生生物の環境利用と密接な関係があることが知られており,河川環境を評価するうえでの重要な調査項目となっている.
リモートセンシングは,河川とその周辺環境を広域にわたって効率的に調査する手段として,近年,積極的に応用されている.これまで,北米大陸などに見られる川幅数十メートル規模の大河川を対象とした,水生生物の生息環境評価や環境修復のための適地選定などに対して,リモートセンシングが応用された事例がある.しかし,日本の山地・丘陵地に見られる,川幅十メートル以下の小河川を対象とした応用事例は少ない.人里離れた源流域を流れる小河川は,踏査が困難な場合が多く,無理な立ち入り調査によって,生息場を大きく攪乱してしまう恐れもある.そのため,現場に立ち入ることなく,上空から調査可能なリモートセンシングの可能性には,大きな期待が寄せられている.
本発表では,日本国内の空中写真測量において一般的に用いられているデジタル測量カメラ(Digital Mapping Camera;DMC)を活用した,航空機リモートセンシングによる河川の瀬淵分布推定手法を提案する.さらに,提案手法を,勾配や河道幅などの河道特性が異なる複数の小河川に適用し,その結果を現地調査データと比較することにより,提案手法の汎用性と限界について議論する.