| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-276
海岸クロマツ林は防風,防砂等の機能を有する地域住民の生活にとって重要な森林であるが,植栽後の密度管理の欠如による過密林分化,マツザイセンチュウ病による枯損,林床管理の欠如による広葉樹林化などの問題を抱えている.一方,海岸クロマツ林は海浜植生が生育すると考えられる立地に植栽されており,林床に残存する海浜植生の保全も必要と思われる.そこで,本研究では名勝にも指定されている慶野松原(兵庫県南あわじ市)において海浜植生を含めた海岸クロマツ林の保全管理の方向性の検討を行った.クロマツ個体の樹高,胸高直径,枝下高,最下葉群高,樹冠長から算出した形状比,樹冠面積をもとに適正密度を求めた.林床管理の状況を明らかにするために,10×10mの方形区ごとに,林床タイプを砂地優占,草地優占,コケ優占の3つに区分した.その結果,約70%の方形区は砂地優占であり,落ち葉かき等により,林床の草地化は防止されていることが明らかとなった.一方,人為的活動に伴う外来植物の侵入も認められた.また,広葉樹の侵入も限られており,クロマツ林として維持されていた.種類組成をもとに海浜植生の類型化を行い各タイプの分布図を作成した結果,比較的良好な海浜植生が分布している海浜部分にも,マツ林管理の枝葉運搬車両による植生破壊が認められた.また,海岸砂浜およびクロマツ林の林床には兵庫県レッドデータAランクの希少植物であるウンラン(Linaria japonica)の生育も確認された.希少種を含めた海浜植生の保全とクロマツ林の維持の両立のために,適切なゾーニングによる海岸クロマツ林の保全管理が重要であると考えられた.