| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-289
熱海・函南地域の山稜はアズマネザサの品種であるハコネダケが大面積で広がる特異な景観を呈している。このハコネダケ群落については、長期にわたる人為的影響により維持されてきたと言われているが群落の動態および隣接群落に分布するハコネダケの生育形態の変化についてはほとんど研究されていない。本研究ではハコネダケの消長動態と生存戦略について、ハコネダケ群落および各種森林植生に分布するハコネダケの個体重量および生育形態の可塑性に基づいて読み解く。これまでの調査、研究により調査地域においてハコネダケが分布する植物群落としてハコネダケ群落、先駆低木林、ブナ林、アカガシ林の4つの植生単位を識別している。本研究では植生調査にかかわり設置した調査区からそれぞれ4箇所選定し、そこからハコネダケを10本根元から切取り稈長と枝葉部分の長さを計測した。さらに稈と枝葉部分を切り分け稈全体と枝葉部分の生体重量を計測した。採取した個体は2週間ほど室内で風乾させた後、枝葉部分と稈の乾燥重量を計測し統計解析を行った。なお、ハコネダケ群落については長期間維持された植分と最近成立した若い植分に分けて解析した。計測データを解析した結果、枝葉重量と稈重量では、同じハコネダケ群落でも長期維持植分と若い植分とでは稈重量の方で前者の方が後者よりも高い値を示した。低木林に分布するハコネダケの稈重量を見ると若い典型小群が長期維持型のアセビ小群よりも高い値を示した。ブナ林とアカガシ林の林床のハコネダケ植分はともに長期間維持されていると考えられる。そのうちブナ林に分布するハコネダケではイロハモミジ小群のものが枝葉重量と稈重量で他よりも高い値を示した。