| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-291
森林景観において、目的とする樹種の樹冠分布をマッピングすることができれば、様々な用途での活用が考えられる。本研究では、ブナが混交する二次林を対象に、開葉が早いブナの特性を利用して、ブナ開葉期を狙って撮影した空中写真を使ってブナ樹冠の識別を行った。得られた樹冠分布から豊作年におけるブナ種子生産量の分布を推定した。
調査地の新潟県東蒲原郡阿賀町は、落葉広葉樹二次林が大面積に分布しており、ツキノワグマなどの野生動物の餌供給源として機能を果たしている。一方で、ナラ類の集団枯損が発生していることから、堅果類等の餌資源分布が急激に変化している可能性がある。
ブナ樹冠面積の把握は、空中写真をPhotoshop(Adobe Inc.)で画像処理して行った。ブナ大豊作年における落下種子量の推定は、2005年の新潟県内6林分の落下種子量と毎木調査による樹冠面積との関係から得た回帰式を使った。ブナ種子並作年における落下種子量の推定は、2009年の調査地5林分の落下種子量と空中写真から得た樹冠面積との関係から行った。
教師付き分類によるブナ樹冠抽出の精度は、91から96%であった。作成したブナ樹冠マップを用いて、豊作年、並作年の種子生産量、および、餌資源として重要な栄養素に換算した資源量マップを作成することができた。今後は、さらにマクロスケールでのブナ樹冠マップを作成することによって、大型野生獣の保護管理や人里への出没予測などに活用できると考えられる。