| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-300
第三次生物多様性国家戦略において,里山は日本の生物多様性を保全する上で非常に重要な空間として位置付けられており,荒廃しつつある里山の保全・修復に関しての対策が急務となっている.しかし,里山と定義される空間ついて,国土の中での分布状態を明確に示す地図は作製されていない.そのため,里山の戦略的な保全・修復計画を策定することが困難となっている.こういった背景から,本研究では日本全域における里山の分布を地図化する手法を提案し,その利用方法について検討した.
本研究では里山を,「森林・農地・宅地のモザイク分布で特徴づけられる景観」と定義し,それらによるモザイク度を算出することで地図化した.すなわち,標準地域メッシュ・第3次地域区画(3次メッシュ;1km x 1km)に占める森林,耕作地,建物用地の面積割合を土地利用メッシュデータ(国土地理院,1976年)から求めた.そして,それらを変数としてShannon-Wienerの多様度指数H’を算出し,これをモザイク度として地図に示した.
里山景観を形成する “人間の働きかけの程度”の指標として市区町村区の人口密度を用い,同域内の多様度指数平均値と対応づけて検討した.その結果,モザイク度が高い地域の人口密度は1000人/km2前後に集中していることがわかった.人口の少ない地域は森林が,人口が多い地域は建物用地が卓越することがその原因である.
モニタリングサイト1000で里山地域として抽出されている地点,および,「にほんの里100選」に立候補した地点を多様度指数と対応づけ選好度指数を算出したところ,モザイク度が高い地域に選好性があることがわかった.このことは,人が“里山らしい”と考える空間特性は,モザイク度に関連していることが示唆される.