| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-046
分子系統樹は生物間の系統関係や進化史が分かるだけでなく、生物の多様性を測る際にも役立つ重要なツールである。現在ではゲノム情報解読技術の飛躍的な向上によって、膨大なデータを用いて系統樹が推定されている。その際には複雑な分子進化モデルを仮定した最尤推定法やベイズ推定法が用いられているため、どのような分子進化モデルを当てはめるのかは重要な問題である。
今のところ、多数の遺伝子座の配列データを用いた解析では、単一モデル・比例モデル・分離モデルを我々は利用することができる。しかし、これまでの研究ではこれらのモデルの比較を行わずに研究者が任意に選択してきた。そこで今回、新たにこれらのモデルを情報量規準に基づいて比較するためのソフトウェアを開発し、既存のデータのいくつかに適用してどのようなモデルが選ばれるのかを検証した。その結果、タンパクコード塩基配列の場合は遺伝子座間比例コドン位置間比例モデルまたは遺伝子座間分離コドン位置間比例モデルが選ばれた。その他の場合はデータセットごと、情報量規準ごとに比例モデルか分離モデルが選択された。単一モデルが選択されるデータセットは今回用いた中には無かった。このことは、全てのデータセットで最適な万能モデルは存在せず、データセットごとに最適なモデルを選択する必要があることを示している。