| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-048

発生システムの適応進化を可能にする遺伝的基盤の実証

*宇津野宏樹(信州大・理), 浅見崇比呂(信州大・理)

多種多様な形態を示す動物群であっても、その内側で多くの保守的な発生パターンが見つかる。冠輪動物上門の共有派生形質である螺旋卵割には、卵割方向がお互いに左右反転した右型と左型が存在するが、ほほすべての種で右型しか見つからない。我々はこれまでに、モノアラガイでは、左型は野生型の右型より8細胞期の大割球と小割球がずれる角度(らせん度)の絶対値が小さいために生存率が低下し、左型が進化しないことを示した。しかし、線形動物と環形動物で少数ながら左型卵割が見つかることや、巻貝で左型に固定した種が繰り返し独立に進化したことは、左型が純化淘汰を乗り越える可能性を示唆している。本研究では、モノアラガイの左型のらせん度に大きな分散があることに着目し、親子回帰によってらせん度の狭義の遺伝率を推定した。その結果、左型のらせん度に有意な回帰が見つかったが、右型のらせん度には見つからなかった。これは、左型のらせん度に特有の相加遺伝分散を実証しており、巻貝のように螺旋卵割の左右極性が殻の巻方向を決定する場合には、左巻が有利な環境において正常な左型卵割が進化する可能性を示している。


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