| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-056
外来植物は原産地の天敵から逃れ,低い食害圧下にある場合が多い.この状況下では,資源を防御形質から成長や繁殖に再分配するように淘汰が働き,抵抗力の低下と競争力の強化がおきると予測される.この予測はEICA(Evolution of Increased Competitive Ability)仮説と呼ばれ,いくつかの研究で支持されている.
一方,原産地の天敵が宿主よりも遅れて侵入し、抵抗性が低下した外来植物を再び摂食すると,一度低下した抵抗性が回復すると予測される.しかし,この予測を検証した研究はまだない.本研究ではブタクサを材料に、この予測を検証した。
ブタクサは約100年前に北米から日本に侵入した外来植物で,日本には天敵がほとんどいなかった.最近では、十数年前に北米から侵入したブタクサハムシによって,本土のブタクサ個体群は激しく食害されている.しかしいくつかの離島にはまだブタクサハムシが侵入していない.われわれは北米東部,日本の本土,離島のブタクサ個体群を用いて,ブタクサの成長速度と、ブタクサを餌として与えたブタクサハムシの適応度成分を比較した.
日本のブタクサは北米のブタクサに比べ,非食害下で早く大きく成長した.日本の離島のブタクサをブタクサハムシに与えた場合,北米のブタクサを与えた場合に比べ,生存率・乾重量が増加し,蛹化までの日数が短くなった.日本本土のブタクサを与えると,離島のブタクサを与えた場合に比べ,生存率が低く,蛹化までの日数が長かった.これらの結果は,日本のブタクサでは,一度は抵抗性が低下しEICAが生じたが,遅れて侵入した天敵の食害によって抵抗性が回復したことを示している.