| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-058

グッピーLWS遺伝子から探る色覚の進化

*手塚あゆみ(東北大・院・生命科学),笠木聡(東大・院・新領域),河村正二(東大・院・新領域),Cock van Oosterhout(University of Hull),松島野枝(東北大・院・生命科学),河田雅圭(東北大・院・生命科学)

色覚は餌の探索や捕食者回避、また配偶者選択に関与し、適応度に大きく影響を与える形質である。色覚の進化は自然選択と性選択の両方に依存すると考えられ、進化生態学にとって重要なテーマである。本研究の対象であるグッピーには色覚の多様性がある。上記のような直接的な選択圧は、形質の多様性を減少させると考えられ、なぜ色覚の多様性が存在しているのかはわかっていない。また、オスのみが派手なカラーパターンを持ち、集団内・集団間で極めて多様である。環境の違いに応じて色覚を進化し、その色覚を配偶者選択にも用いてオスのカラーパターンを評価する『センサリードライブ』という仮説がある。グッピーにおいても色覚が多様に進化した結果、メスの選好性が多様化し、カラーパターンも多様化している可能性が考えられる。色覚の多様化に寄与する候補遺伝子としてLWS(長波長感受性)オプシン遺伝子がある。光感受性はオプシンの配列変異によって変わるため、LWS遺伝子の多型は色覚感受性の違いを生じている可能性がある。LWS遺伝子を用いる事で、色覚が多様に進化した結果、メスの選好性が多様化し、カラーパターンも多様化したかを検証できると考えられる。本研究ではグッピーのLWS 遺伝子の配列情報を用いて選択の検出を行った。その結果、LWS遺伝子には多型があり、異なる光感受性のピークを持つLWS-Aアリルが集団間・集団内維持されていることも明らかになった。LWSの多型には平衡選択と多様化選択が働いている可能性が示唆された。この結果は、色覚は環境の異なる集団間、同一の集団内の両方において多様性が維持されるメカニズムが存在することを示唆している。


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