| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-067
多くの生物で実効性比はオスに偏り、その偏りの程度は性淘汰の強さを決める。繁殖可能なメスの出現数が時間的に集中し実効性比の偏りが小さくなると、特定のオスによるメスの独占が制約され性淘汰が弱まることが、理論的にも実証的にも示されている。温帯に分布する生物の多くは明瞭な繁殖期を有し、一年のある期間に繁殖可能メスの出現が集中する。一方、繁殖可能オスの出現がメスほど季節的に集中しないならば、実効性比は季節的に変化すると予想される。本研究では、メダカOryzias latipesをモデルにその検証を行った。新潟市のある地域集団を対象に、野外から採集された個体の繁殖可能性を室内交配実験により調べたところ、繁殖可能なメス(=室内で産卵に至ったメス)の割合は4月から徐々に増加していき、6月には100パーセントのメスが繁殖可能となった。その後、繁殖可能メスの割合は徐々に減少し、9月にゼロとなるといった単峰型の季節変化パターンを示した。一方、繁殖可能なオス(=室内で成熟したメスに受精させることのできたオス)の割合は、4月から9月までほぼ一定の値を示した。以上の結果は、繁殖期の始まりと終わりに実効性比はオスに偏るが、繁殖盛期にはその偏りが小さくなることを示している。これは、同じ集団の1繁殖期間中でも、繁殖盛期ほど性淘汰圧が弱くなることを示唆している。こうした性淘汰圧の季節変化パターンは、温帯に分布する生物にとって一般的な現象かもしれない。