| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-068
生物は環境に対して進化的に適応するだけでなく、一世代の中でも生理的、形態的可塑性や、学習による行動の変化で迅速な適応を示す。現在、表現型可塑性やゆらぎが生物の進化に影響を与えることが大きな注目を浴び、理論、実験共に多数の研究がなされている。それに対して行動の可塑性としての学習は、進化との関係について調べた研究はあまりない。これは学習行動に関わる神経系や分子メカニズムの複雑さに起因する。しかし近年の神経行動学やシステムバイオロジーの発展は、少しずつ行動、学習メカニズムを明らかにしつつある。今後、学習の進化研究は、これらの学問から得られた知見を統合して考える視点が必要となるだろう。
学習による表現型の変化が遺伝的に固定し、進化に影響しうることはBaldwin効果として知られている。私たちはこれまでに、簡単な連合学習を組み込んだショウジョウバエのモデルを構築し、産卵培地の選好性を選抜するシミュレーションを行った。学習率や生来の選好性の条件によっては、学習が進化を促進しうることを示した。本研究では昆虫の学習について、より機構的なモデルを構築する。神経系への選択を通じ、学習行動が遺伝的に固定されていく過程(Baldwin効果)を解析する。