| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-069
ダニは昆虫類に次ぐ多様な生物集団であり,地球上の様々な環境に分布している.これまでに約400科4000種が知られており,その起源は古く約4億年前のシルル紀には現存する主要な目の大部分が出現していたとされている.一方,ダニ類の生物学的研究は他の動物分類群と比較して遅れており,分類および系統進化に関しても不明な点が多い.本研究ではそうしたダニ類の中でも特に研究例が少なく,未知の部分が多い,海に生息するウシオダニ類に注目した.
ウシオダニ類とは節足動物門蛛形綱ダニ目ケダニ亜目ウシオダニ科に含まれる,体長0.5mm程度の小型のダニ類である.生息範囲は非常に広く水深5,000m以上の深海から高山帯の泉に至るまで世界中のありとあらゆる水圏に生息しているが,そのほとんどは潮間帯及び亜潮間帯に分布が集中していると考えられる.また,潮間帯のウシオダニの生息密度はかなり高く,西ドイツの河口では1m2に200,000個体を記録している.これらのことからもウシオダニ類は重要な生物多様性の構成要素であると同時に重要な生態系機能を担っていると予測される.しかし,この生物群は、生物多様性の基本情報を整備する上での分類が非常に遅れており,さらに生態学的な情報も乏しく,ウシオダニ科における系統および多様性情報はほとんど不明なままとなっている.そこで本研究では,極めて微小な動物であるウシオダニ類の形態形質を保存しながら,DNA抽出を可能とする方法を検討し,この方法により得られたDNA情報に基づいてウシオダニ類の系統関係の推定および沿岸生物としての多様性の把握を試みた.