| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-070

メダカ属魚類の生殖隔離に対する地理的分布域と遺伝距離の影響

*中田翼(新潟大院・自然科学),山平寿智(新潟大・理),佐藤正祐(東山動物園・世界のメダカ館),藤谷理映子(東山動物園・世界のメダカ館)

地理的に隔離された集団は独立に進化し、互いに分化していく。ゆえに、遺伝的分化が進んだ集団間ほど、交配前生殖隔離(=同類交配)も交配後生殖隔離(=雑種個体の適応度の減少)も強いとされる。また、長期間地理的に隔離されていた集団が二次的に接触した場合、雑種が生じないよう,交配前生殖隔離が急速に進化するとされる(強化)。この集団遺伝学的理論に従うと、近縁種間の交配前および交配後隔離の程度は両者の分岐年代が古いほど強いが、分岐年代が同程度の場合は異所的近縁種間より同所的近縁種間の方が交配前隔離が強いと予測される。本研究では,系統関係が既知で、異所的/同所的に分布するメダカ属(Oryzias)近縁3種を用いて、その検証を行った。交配実験の結果,系統関係は最も近いが異所的に分布するメダカO. latipesとハイナンメダカO. curvinotusとは、自由に交配を行い雑種個体も形成されることがわかった。また、系統関係が遠く異所的に分布するメダカとペクトラリスメダカO. pectoralisとは、雑種は生じない(=受精率がゼロである)が部分的に交配を行うことがわかった。しかし、系統関係は遠いが同所的に分布するハイナンメダカとペクトラリスメダカとは、交配をほとんど全く行わなかった。これらの結果は、上記の予測に一致する。ハイナンメダカとペクトラリスメダカとの間の強い交配前隔離は、オスの求愛行動や体色に基づくメスの配偶者選択によって成立すると考えられるが、その検証は今後の課題である。


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