| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-073

砂浜と磯に隔たりはあるのか? 〜同所的な海岸生アオスゲ類の多様化〜

*大西亘(九大・理),矢原徹一(九大・理)

海岸近くに生育する植物は、潮風や強い日差しに耐えうるような、内陸性の植物とは異なる形質を獲得しており、海岸生植物として認識されている。また、海岸近くの環境は均一でなく、岩場に直接植物が生育しているような磯や海岸風衝地、砂の上に植生が発達する砂浜、海岸生の樹木が優占する沿海林、河口部に発達する干潟など、様々な生育環境が隣接して存在する。こうした海岸近くの異なる環境では各環境の特性が顕著に異なっており、複数の環境にわたって分布する種はほぼ見られない。一方、海岸近くの各環境下の植物は、隣接する別の環境に近縁な種がいないものがほとんどであり、このために環境間の障壁を越え、複数の環境にわたって分布するような種が存在しないのかもしれない。顕著な環境特性のために独立していると考えられる海岸付近の植物の生育環境が、非常に近縁な種間であれば環境間の障壁を越えられるのか、について隣接する磯と砂浜に近縁種が生育するカヤツリグサ科スゲ属の一群、アオスゲ類を用いて、磯に生育する種と砂浜に生育する種間の遺伝的交流の有無とを調査した結果をもとに検証する。


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