| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-075
表現型可塑性は「ある遺伝子型をもつ個体が、異なる環境に対して発生的にそれぞれ異なる表現型を示す現象」と定義される。ツノアブラムシ族には、捕食者からのコロニー防衛を専門に行う不妊の兵隊を産出するもの(真社会性アブラムシ)もいる。兵隊は生殖個体に比べて発達した前脚と一対の角をもち、これらを用いて捕食者からコロニーを防衛する。
不妊の兵隊を産出することは、コロニーの成長率を下げるというコストがある。このため母虫は捕食リスクの経時的な変化に応じて兵隊の数を可塑的に調節していると予想できる。さらに兵隊の産出数を変えるだけでなく兵隊1個体あたりの強さを変えることによっても防衛強度の調節を行っている可能性がある。実際にツノアブラムシ族のササコナフキツノアブラムシの兵隊サイズは、野外における経時的な捕食リスクの変化と正の相関をもつことがわかっている(服部, 私信)。また、母虫が可塑的に兵隊のサイズを調節していることも明らかになっている。これらの表現型の可塑性が、捕食者に対する適応によって生じたかどうかを論じるためには、まず防衛形態形質の表現型可塑性に遺伝的な変異があることを示す必要がある。そこで本研究では、異なる集団由来のアブラムシクローンを同一環境下で飼育し、それぞれのクローンが産出する兵隊の防衛形態形質サイズを比較した。その結果、防衛形態形質の可塑性を示す反応のノルムに遺伝的変異があることが明らかになった。