| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-079

日本の海岸と内陸性山地におけるアサツキ分類群の分布と系統

川瀬大樹 地球研, 林一彦 大阪学院, 佐藤謙 北海学園, 堀井雄治郎 秋田県, 湯本貴和 地球研

ネギ属には多くの種が知られており、特にタマネギやネギなどは人間に食用として最もよく利用されている植物のひとつである。そのなかでアサツキ(Allium schoenoprasum var. foliosum)は、主に北海道から本州にかけて分布する植物であり、栄養価の高い植物として栽培もされている。アサツキが自然分布する生育地は、主に高山や海岸の岩礫地であり、特に乾燥しやすい土壌に生育し、生育環境に応じて様々な変種が知られている。例えば、アサツキは蛇紋岩といわれる特殊な岩石土壌にも分布しており、北海道の橄欖岩地域であるアポイ岳では矮小型変種のヒメエゾネギ、本州の蛇紋岩地域である至仏山では、矮小型変種のシブツアサツキが分布している。また北海道の海岸部には花のサイズが大きいタイプとしてエゾネギが分布し、高山地域ではシロウマアサツキが分布している。アサツキの分類形質の中で、観察して識別できる点は、花弁に対するおしべの長さである。しかし必ずしも生育環境とアサツキの形態形質は一致しておらず、アサツキ種内分類群の系統地理的な分布を把握した上でアサツキの分類を整理していくことが必要である。本研究では、アサツキの種内分類群の遺伝的関係を明らかにするために、様々な生育地におけるアサツキ集団を対象に遺伝学的解析を行った。遺伝解析に用いた遺伝子は、核DNA領域(ITS)と葉緑体DNAの遺伝子間領域であり、それぞれダイレクトシークエンス法によって塩基配列を解析した。その結果、山地に分布する集団には、複数のITSタイプが検出され、海岸の多くの集団には同じITSタイプが検出され、海岸部と内陸における分布の広げた過程が異なっている可能性が考えられた。


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