| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-080
人為の働きかけによって維持されてきた草原は,農業の近代化や化学肥料の普及により,利用が放棄され,現在では遷移が進行している.草原に依存する種の多くは,遷移の進行に伴って減少し,絶滅の危機に瀕しているものも少なくない.このような状況において,各地で草原保全の活動が行われている.保全活動を進めていく上で,草原の状態を把握することが必要となるため,指標となる種を示すことは重要である.本研究では,管理履歴の異なる草原における植物相を把握し,それらを比較することにより管理履歴と生育種の関係を明らかにすることを目的とした.
調査地とした草原は,広島県安芸太田町深入山,広島県北広島町雲月山及び千町原である.深入山と雲月山は火入れ草地である.深入山は継続的に火入れが行われており,雲月山は1998年から7年間火入れが途絶えた後,部分的に火入れが再開されている.千町原は草刈り場として利用されていたが,牧場造成のため牧草が植えられ,現在では自然公園になっている.いずれも広島県の北西部に位置し,年平均気温は10℃前後,過去10年間の平均降水量は2,292mmであり,県内でも積雪量の多い地域である.
調査は2007年4月から2009年10月にかけて行い,調査地域の全域を踏査し,すべての維管束植物について出現種を記録した.調査の結果,総出現種数は雲月山,千町原,深入山の順で多かった.すべての草原に共通して出現した草原生の種は,オミナエシ,シバ,センブリ,ツシマママコナ等であった.また,火入れ草地である深入山と雲月山で共通して出現した草原生の種は,キキョウ,オトコヨモギ,シオガマギク,スズサイコ,マツムシソウ等であった.これらの結果から,管理履歴の違いによって生育する草原生の種が異なることが明らかになった.