| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-081

都心水辺緑地に生息する淡水魚の由来 ‐遺伝的解析と保全への示唆‐

高村健二(国立環境研)

皇居外苑濠は都心に残る貴重な池沼生態系であり、これまでに外来魚駆除とあわせて魚類相調査がなされてきたが、種内系統の遺伝的分析はなされていなかった。そのために外来種の由来や在来種の地域固有性の判別ができず、外来を防ぐためにはどのような対策をとればよいか、濠管理上でどの魚種を保全すべきかの検討がなされていなかった。そこで、代表的な国外外来魚オオクチバスおよび国内在来魚モツゴについてミトコンドリア遺伝子による遺伝子分析を行い、由来推定を行った。

まず、環境省皇居外苑管理事務所による魚類相調査が2008年度に実施されたので、その採集物からオオクチバス・モツゴ標本を入手した。オオクチバスについては、ミトコンドリア調節領域遺伝子約300塩基対の塩基配列を決定し、既報の塩基配列ハプロタイプと合わせて近隣結合法により系統樹を作成した。その結果、標本はすべて一つのハプロタイプに判別された。モツゴについては、ミトコンドリア16S rRNA遺伝子約1230塩基対の塩基配列を決定し、既報の塩基配列ハプロタイプと合わせて近隣結合法により系統樹を作成した。その結果、標本は大きく2群の系統に判別された。

得られた結果から、以下のように考察した。オオクチバスで見つかった系統は、1925年にカリフォルニアから移植された魚に由来する可能性があり、国内に広く分布している。これまでの調査では放流機会の多い水域から複数の系統が同時に見つかっていることから考えて、外苑濠への移殖機会は限られていると推測された。在来魚モツゴには、国内在来とアジア大陸由来の系統が見つかった。出現頻度から見て、国内在来系統が多数を占めたが、アジア大陸産系統も少ないながら定着しており、他魚種随伴などにより外来したものと推測された。


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