| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-084
里地里山では生物多様性保全の観点から二次林や畦畔草地の植生について多くの
研究がなされてきたが、林縁の植生に関する研究は少ない。林縁は森林生態系と
農地生態系との環境移行帯にあたり、光量や土壌水分などの物理環境が大きく変
化する場所である。そのため、林縁は草本種に対して森林や農地とは異なった独
自の生育環境を与えうる。日本の里地里山では,林縁はササユリやなど希少な草
本種の重要なハビタットとなっており保全上重要な環境でもあると考えられる。
そのため里地里山において林縁の物理環境の特異性を定量的に測定し,その環境
に成立する群集の特異性を示すことは、里山における生物多様性保全にとって必
要であると考えられる。
この研究では、里山において森林から里草地にかけての
物理環境(光・水)と植生の変化を調査し、林縁環境の特異性を評価することを
目的とした。
調査は2009年の秋に、兵庫県宝塚市西谷地区の里地里山における約2.5×6kmの
範囲で行った。調査地内で二次林・植林から里草地にわたる48〜64mのトラ
ンセクトを13本引き、各トランセクト上に1×1mコドラートを11〜12
個,計151個設置した。全てのコドラートで開空度と土壌水分を測定した。ま
た各コドラートにおいて高さ1m以下に出現する全ての種をリストし、それぞれ
の出現頻度を記録した。解析では各トランセクトにおいてコドラート間の環境と
植生の類似度を算出し、その類似度をもとに林縁に特異性を定量的に示すことを
目指した。その結果、林縁では環境と植生ともに特異性がみられることが示唆さ
れた。この結果を基に、林縁特有の草本群集がどのような環境下で形成されるの
かについて考察した。