| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-093

小笠原におけるダム湖湖底のユスリカ相の変化について

上野隆平, 佐竹潔, 野原精一(国立環境研)

小笠原諸島のユスリカ相については、生きた幼虫・成虫の採集データから、確認されたユスリカののほぼ半数の種が固有種であること、今のところダム湖に特異的に出現するハイイロユスリカ(Glyptotendipes tokunagai )は移入種の可能性があることなどが分かってきた。ただ、活動中の幼虫・成虫を採集する方法では、特定の時季に短期間しか出現しない種や、植物に穿孔するハムグリユスリカ属(Stenochironomus )のような特殊な生活様式の種を見落としている可能性があった。そこで、本研究では、父島のダム湖の湖底堆積物中に永年集積されたユスリカ遺骸の解析を行い、未記録のユスリカが検出されないか確認することと、ユスリカ相の長期間の消長を知ることを目的とした。

ダム湖内の流入河川からの距離や水深が異なる数地点から、佐竹式コアサンプラーを用いて各3本の柱状サンプルを採り、堆積物を表層から5cmごとに切り分け、それぞれの切片の一部を0.25 mmの篩の上で静かに洗浄し、残ったユスリカ頭殻を×15の実体顕微鏡下でソーティングし同定した。

その結果、採集されたユスリカの中で、植物に穿孔するハイイロユスリカの個体数が最も多かった。また、他のユスリカは、表層と深層で密度に顕著な差が見られなかったが、ハイイロユスリカは表層に高密度に見られたことから、新参のユスリカであろうと思われた。ハムグリユスリカ属など未記録の属は見つからなかった。生きたユスリカは深い地点に見られないなど不均一に分布していたが、遺骸は湖内にほぼ均一に分布しており、生息場所を反映しているとは思われなかった。


日本生態学会