| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-104
里地里山の一構成要素である草地環境の面積は、高度経済成長期以降の土地利用形態の変化に伴い全国的に減少し続けており、多くの草地生植物の絶滅や種多様性の低下が危惧されている。しかし、草地保全に向けて地域スケールで草地環境の種多様性の変化をとらえた事例研究は少ない。そこで本研究では、伝統的農村景観の残る宮崎県の里地地域4地区において、過去の土地利用履歴が草地の種多様性に重要な影響を及ぼしていることを、草地植物相および絶滅危惧種(以下RDB種)の個体数レベルでの比較によって明らかにし、草地の種多様性が維持されるためのパターンを解明することを目的とした。
はじめに、土地利用図から調査地周辺の草地面積の変遷および4地区内の植生変遷を明らかにした。さらに、6タイプの草地環境において草地植物相の多様性や種組成を比較し、管理形態に応じた種多様性の違いを明らかにした。また、草地環境の多様性の指標として4地区に共通する草地生RDB種の開花個体数から草地生植物種の分布特性を評価した。最後に、土地利用変遷の中での草地の植物相パターンを解明し、今後の草地生種の多様性保全へ向けた管理方法の提言を行った。
調査した4地区の土地利用変遷のパターンは異なるものの、草地植物相を比較すると、種組成や総出現種数には大きな違いは見られなかった。4地区ともに、現在も伝統的な水田耕作地環境が維持されているため、耕作地周辺の草地環境に未だ多くの種が残存していたと考えられる。また、草地生種にとっての主要な生育地である火入れ管理草地の面積が大きく減少した2地区においては、草地生RDB種の開花個体数が非常に少なかった。地区単位での草地面積の減少が、RDB種をはじめ多くの草地生植物種の個体数の減少を引き起こしている可能性がある。