| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-113
ある場所に生育する植物集団の平均的な形質値は、その環境条件によって変化する。例えば乾燥した環境ほど葉の厚い植物が多い。これには、同一種内個体間での環境に応じた可塑的な形質変化と、環境に対して分布する種が入れ替わることの両方が寄与している。多くの形質では、種内個体間でみられる環境傾度に沿った変化の方向は、種や機能群によらず同じで、また、種間でみられる変化の方向とも一致すると考えられている。しかし、葉の戦略を表す代表的な形質であるLMA形質(葉の単位面積当たりの重量)に関しては、落葉植物と常緑植物で、光環境に応じた変化の方向が異なることを示唆する報告がある。
本研究では、落葉植物と常緑植物が共存する林床植物集団について、生育光環境に対するLMA形質の種内変異と種間変異の両方を同時に調査した。その結果、落葉種では、種内個体間、種間ともに光環境が良いほど高いLMA値を示した。いっぽう常緑種では、種内個体間では多くの種で光環境がよいほどLMAが高かったが、種間では逆の傾向を示した。つまり、常緑か落葉かによって種間変異の方向が異なり、また常緑種では、種内個体変異の方向と種間変異の方向が異なる場合があることが分かった。